シュテファン・ツワイク著「ジョゼフ・フーシェ」岩波文庫 - 書評あれこれ~

あらすじ シュテファン・ツワイク著「ジョゼフ・フーシェ」岩波文庫 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 ジョセフ・フーシェはフランス革命期の政治家で、水の如く敵情に従って変化をしながら動乱の時代を生き抜く姿が描かれています。

《ナント選出のジョセフ・フーシェ、熱弁をふるって国王の生命を守ろうと、まだ昨日はたしかに友人に断言していた男、十時間前には決意を固めた人たちの中で最も決然たるふうをよそおうていた他ならぬその男が、ついに呼び出された。しかしながらその間に、先の数学教師、計算のたくみなフーシェは投票を数えていたのであって、もし助命に投票すれば、間違った党に、自分の決してくみしたくないただ一つの党、少数党に属するであろうということを見てとっていたのである。そこで彼はいつも足音を立てない歩をいそいで演壇にはこんだ。そして彼の蒼ざめた唇から次の二語が低くささやかれたのである。「死刑」。》

 フーシェの変わり身の早さ、ずる賢こさがうかがえる一文です。自らの立場が危険もなく有利な立場となるまでは多数に身を隠して、安全な状態の中に隠れている。しかし、いざ局面が変わると何事も無かったかのように180°相手に寝返ってしまうというフーシェのずる賢さと用意周到さが描かれています。

《交渉したり駈引きしたり約束したり相手を愚弄したりすることは、実際三度の飯より好きな彼の煩悩である、そこで彼は無鉄砲な計画を立てた。自分の力ひとつで交渉を継続することにきめたのである。むろん彼は皇帝の依頼のように見せかける。すなわち自分の代理人にもイギリスの当局者にも、皇帝は諸君の手を通じて平和を結ぼうと努めていられるのだとかたく吹きこんでおいて、その実オトラント公爵ただひとりで糸を引くことにきめたのである。これこそまったく狂気の沙汰であり、皇帝の名と彼自身の大臣の職権との厚顔無恥な濫用であり、世界史上にも類例のない破廉恥行為である。》

 フーシェは多数派について常に安全な隠れ蓑の中で様子を窺っていると思いきや、大胆にも皇帝の知らないところで独断で交渉を継続するという大胆な一面を見せています。慎重に見えて大胆、逆に大胆に見えて慎重というように千変万化、臨機応変に変化していく事で周囲をあっと驚かせたのだと思います。 

《おおっぴらに告訴したり、残忍な死刑宣告などは避け、本当の暴力ではなくて、暴力の身振りで彼は満足なので、パラーや彼の同僚が、その羽帽の上に載せている役にも立たない飾りなどは眼中になく、国家の本当の隠然たる権力を握ってさえおればいいのである。》

 フーシェにとって、表立って名声を挙げることや、国家の利益、自己の利益等にも興味は無く、国家の権力を裏から糸を引くという緊張感が彼の心を満たしていったようです。

 孫子では軍の形について以下のように語られています。

《そもそも軍の形は水の形のようなものである。(中略)だから、軍にはきまった勢いというものがなく、またきまった形というものもない。うまく敵情のままに従って変化して勝利を勝ちとることのできるのが、[はかり知れない]神妙というものである。》

フーシェが水の如く敵情に従って、時には180°違った態度を見せる事で変化して動乱の時代を生き抜いた姿が描かれています。 

シュテファン・ツワイク著「ジョゼフ・フーシェ」岩波文庫
金谷治訳注「孫子」岩波文庫
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ジョセフ・フーシェはフランス革命期の政治家で、水の如く敵情に従って変化をしながら動乱の時代を生き抜く姿が描かれています。《ナント選出のジョセフ・フーシェ、熱弁をふるって...

2012-05-12 13:32 from まとめwoネタ速neo

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