社会から断絶された中でどう生きるか?(ロビンソン漂流記) - 書評あれこれ~

あらすじ 社会から断絶された中でどう生きるか?(ロビンソン漂流記) 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説  キーワードは「社会からの断絶」
この本を読んで、孤独になりがちな現代の社会を予見したいたのではないか!という錯覚に見まわれた。
主人公のロビンソンクルーソーは乗っていた船が難破したため無人島に流れ着き、
社会から断絶された環境の中での生活を余技なくされる。

会社からの突然の解雇や、倒産などで社会から断絶されることが珍しく無い中、
本書の内容はそのような状況に対処するための有意義な指針を示してくれる。

《そしてその頃は私の理性が私の失意に打ち克つようになり、私はできるだけ私自身を慰めて、
 私の境遇でいいことと悪いことを比較し、境遇としてはまだ増しなほうであることを明かにしようとした。
 私は次のように、帳簿の貸方と借方と同じ形式で、私の生活で楽なことと辛いこととを並べてみた。
 (中略)
 とにかく私はこれによって、どんなに惨めな境遇でも、何かそこには積極的な、あるいは消極的な面で、
 有難く思っていいことがあるという事実を明らかにすることができた。
 そして私自身が経験したような、最悪の境遇でも、そこに何か我々を慰めてくれて、良いことと悪いこととの貸借表の中で、
 貸方の方に記入すべきものが必ず見出せるのである。》P75

 会計の帳簿のように最悪と見える状況の「良い面」と「さらに悪い面」を記帳することで、
 今の状況を客観的に見ることが出来る。そうすることで、「まぁ、ましか」と思えるようになると言っている。

《それまで私の唯一の悩みは、人間の社会から隔離されて、広い海の中に孤島に閉じ込められ、沈黙の生活を続けることを余儀なくされていることだった。
 私は神によって、人間の一人として人間の中に顔を出す資格がないと判断されたのも同様な気がして、もし一人でも他の人間に会うことができたなら、
 死から救われたのも同じで、魂を救われるという最大の幸福の次に望ましいことだと思っていた。》P180

 人間にとってコミュニケーション出来ない状況、というのは何にもまして耐え難い。
 「一人に人間に会えたなら、死から救われたも同じ」という文がそれを物語っている。
 
《しかし今では考え方が変った。私は毎日聖書を読み、その意味を私の現在の状態に応用して、慰められた。ある朝、私が悲しくて堪らない時に聖書を開くと、「私は決して

お前を離れず、また見捨てもしない」という言葉が目に入った。私はその時、ちょうど私が神にも人にも見放されたものとして、現在の状態を嘆いている際に、そのようにこ

の言葉を読んだのであるから、それは私に向って言われたものに違いないと思った。それならば、と私は考えた。もし神が私を見棄て給わないならば、何の悪いことが起こり

得るだろうか。また世界じゅうのものが私を見棄てたとしても、それが何だろうか。その反対に、仮に世界中のものが私に付いたとしても、もし私が神の恩寵と祝福を失った

ならば、その不幸は比べものにならないほど大きなものだった。
 私はこの時から、こういう、人に見放された、孤独な状態にあっても、あるいは他のいかなる状態にあるよりも、幸福になることができると考えるようになった。
 そしてそう考えることから、私はここに来たことを神に感謝しようとしたことがあった。》P132

 人はコミュニケーションする、つまり誰かに「共感」してもらいたい動物でもある。
 「共感」は何も人や生き物だけではない。
 書物を読むことは、本を書いた著者との一対一の対話の時間でもある。
 一つの言葉が人の心にどれだけ潤いをもたらしてくれるか、というのを大きく感じる。

 作品中でロビンソンクルーソーは聖書を自分の心の拠り所にして、無人島で何十年と生活していく。
 社会から断絶された状況の中でも一人生きていく人間の強さを描いた本著の内容は、
 決して昔のことではなく、むしろ人との関わりが疎遠になりがちな現代であるからこそ、
 読まれるべき物だと思いました。

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)


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