スタンダール「赤と黒」書評 - 書評あれこれ~

あらすじ スタンダール「赤と黒」書評 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)



スタンダール

赤と黒〈下〉 (岩波文庫 赤 526-4 9


赤と黒


齋藤孝著「古典力」岩波新書で、《この作品は心理小説の傑作》と言っているように、
貧しい家柄から、貴族階級を目指す、ジュリアンの力強さと複雑な葛藤手に取るように微細に描かれている。
武勲による立身出世の望みを失い、僧侶階級に身を投じ貴族階級に食い入ろうとするも、
最後には信頼していた夫人からの裏切りに合い、復讐のために夫人を射殺しようとして未遂に終ることで死刑の判決を受ける。
立身出世のために奮闘し、最後には階級社会の壁が立ちはだかり死刑を受け入れるジュリアンの魅力と切なさが胸を打つ作品。


《(たとえおれが成功したとしても、こういういやしい人間たちの間にはさまって一生を過すと思うと情けない!食卓でガツガツ食う豚肉入りオムレツのことしか頭にない大

食いどもや、どんな悪事にも辟易しないあのカタネードといったやからだからな!彼らはいつか権威にありつくことだろうが、じっさい、それは何という高価な犠牲をはらっ

てのことだ!)》P376

 神学校に入学したジュリアンは周囲に対する憎悪の感情に激しく駆られる!
 貧しい家から立身出世を目指して、貴族階級に食い入ろうとするジュリアンにとって、
周囲の貴族階級出身者は醜悪で卑しい人間に見えたのだと思う。
 野心に駆られる見るからの感情を必死に抑える、心の葛藤を描いた文章。

《(おれの評判も、一瞬のうちに、すっかり地におちて、台なしになってしまう!と彼は箱の燃えるのを見ながら心に思った。(ところがその評判がおれの資本のすべてなん

だ。おれはただそれのみで生きている・・・・・・しかも、ああ、なんという生活だ!)》P126

 貴族階級という基盤が持たず、貧しい家柄から野心を野望のためにその実力一つで戦うジュリアンにとって、
評判を失うことは全てを失うことと同義であった。今まで積み重ねてきた評判も、一つのミスだけで見る陰もなく崩れ去ってしまう……
そんな状況の中で葛藤するジュリアンの心情が描かれた一文。

《ジュリアンは怒りに逆上して、叫んだ。
 「おお、わが祖国よ!汝はまだ何と野蛮な国であることか!」そうして彼は鍵番が前にいることも忘れて、考えることを口走りつづけた。》P522

 卑しい身分に生まれながら立身出世を試みようとしたジュリアン。
 貴族階級が幅を利かせた、硬直的な社会に対する批判の意味が込められている。
 立身出世を試みるも階級社会という壁に跳ね除けられた、切なさと葛藤が伝わってくる。

 立身出世という野心のために戦い、苦悩し、頂点に上り詰めたところで、
 最後には裏切りによって、その野望は無残にも崩れ去ってしまう・・・
 野心のために駆け抜けたジュリアンの心の葛藤に圧倒される作品でした。
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