「こころ」の先生の苦悩 - 書評あれこれ~

あらすじ 「こころ」の先生の苦悩 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説  夏目漱石「こころ」の先生は友人Kを裏切って恋人を得たことから、その後罪悪感に苦しみ自分の腹の中の想いを打ち明ける人物を追い求めて長い苦悩の日々を送っていました。この文章を読んで、現代というのは一つの問題を解決してから先に進もうとするにはあまりにも、世の中の流れが速すぎることと、外の物に対して大きな期待を寄せることのし辛さを感じました。
 
 先生は私に対して以下のように語っています。
《「あなたは本当に真面目なんですか」と先生が年を押した。「私は過去の因果で、人を疑りつけている。だから実はあたたも疑っている。然しどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るには余りに単純すぎる様だ。私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたは腹の底から真面目ですか」》

 先生は自らの腹の中の想いを打ち明けるに足る人物が現れるのをずっと待っていた。また、「死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている」と言っているように、その人物に対してかなりの物を期待しているのが分かる。

 しかし、「あなたはそのたった一人になってくれますか」と言われてもその期待に答られるような人物はそう簡単には現われないと思う。先生がKの自殺を目の辺りにしたのは学生時代の事だから約10~20数年の間は罪悪感に苛まれながら生きてきたのだと思われる。先生はKの自殺という問題を腹の中に抱えたまま、それを解決出来ることもなく長い時間を過ごしたことになる。

 次から次へと新しい情報が飛び交う現代では、1つの問題を解決しないと前に進めないというやり方ではあまりに効率が悪い。時には解決方法が分からない場合、それを先延ばしにして次の事に取り掛からなければならないことも多い。また、「死ぬ前に一人でいいから他を信用して死にたいと思っている」と言われてもそんな重い役柄を引き受けてくれる人はそうはいないと思う。現代は目前の課題に対して、真剣に完璧に向き会おうとするものにとってはあまりにも生き辛くなっているような気がする。

夏目漱石「こころ」新潮文庫
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