「ハムレット(シェイクスピア)前王を捨てて叔父との生活を選んだ母を糾弾するハムレット」 - 書評あれこれ~

あらすじ 「ハムレット(シェイクスピア)前王を捨てて叔父との生活を選んだ母を糾弾するハムレット」 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説
ハムレット

ハムレット (新潮文庫)


シェイクスピア
シェイクスピア著 福田恆存訳「ハムレット」新潮文庫

ハムレット
《申し上げましょう。
女らしい羞恥心をふみにじり、貞女を偽善者よばわりもしかねぬおふるまい。
恋に一途の無邪気な額から清浄な薔薇の香りを奪い、
その代りに見るもあさましい傘をふきださせ、
夫婦の誓いもばくち打ちの約束ごと同然のいいかげんなものにしてしまわれた。
そうではございませぬか。神に誓った言葉から魂を抜き去り、
神聖な儀式をそらぞらしい道化芝居に化するにひとしい御所行。
それでは天も憤りに面を赤らめ、さすがの大地も、憂えの深きに堪えかねましょう。》

ハムレット
《(壁の肖像画のところへ妃を引きずって行き)これをごらんなさい、
この二つの絵を、血を分けた二人の兄弟の肖像を、
この面にただよう気品ー波打つ髪型形は太陽神アポロそのまま、
神々の長ジュピターにも見まがう秀でた額、眼の鋭さは三軍を叱咤する軍神マルス、
それにこの凛々しい立ち姿。
天を摩する山頂にいま降り立ったばかりの使神マーキュリーそっくりではございませぬか。
いかなる神も、これこそ人間の鑑、ありとあらゆる美を一身に兼ね備えた男と認めずにはおられますまい。
母上、母上はこういう人を夫にしておいでだったーそれが、さあ、こちらをごらんなさい。これが今の夫、
虫のついた麦の穂同然、すこやかに伸びた兄穂を枯らしてしまったやつだ。
母上のお目はどこについておいでなのか?
美しい山の牧場をすてて、こんな荒地に餌をあさるなどとは。ふむ!それでも、お目があるのか?
まさか恋ゆえにとは言えますまい。
そのお年では、情念の焔も静まり、分別のまえにおとなしく席をゆずるのが当然。
それを、どうして、これからこれへ?そう、感覚はおもちのはずだ。
さもなければ、欲望も起こらぬはず。
が、その感覚が麻痺しておいでなのだ。気ちがいにしてもこのような間違いはしますまい。
いかに狂気に憑かれた感覚にも、多少のわきまえはあるはず、
かほどの差が見わけられぬはずがない。
一体どのような悪魔に魅入られて、こうしためくらにもひとしい所行を?
感情がなくても目があれば、目は見ずとも、感情があれば、手や目がなくても、耳があれば、
いえ、何はなくとも真威を嗅ぎわける鼻さえあれば、
たとえ狂っていようと、この五感のひとかけらでも残っていれば、
こうしたばかなまねが出来るわけがないのだ。
ああ、羞恥心、きさまは、一体、どこに?
ええい、地獄の悪魔め、いい年をした女の体内にもぐりこみ、このようなたくらみがしでかせるなら、
燃えやすい若い男女などは朝飯まえ、徳も操もあるものか、
おのが青春の火に蝋と溶けてしまうがいい。
なんの恥ずかしがることがあるものか。
燃えあがる情念の焔、どうあがいても逃れられるものではない。
見ろ、雷すらかっかと燃えている。理性も邪淫のとりもち役をする世の中だ。》


《ああ、ハムレット、もう、何も言わないで。
そのお前の言葉で、おのが心の奥底をまざまざとのぞき見るおもい。
どす黒いしみにまみれて、このように、いくら洗っても落ちはしまい。》

ハムレット
《落ちますものか。いっそ、このうえは、脂ぎった汗くさい臥床で、
ただれた欲情にむせまろび、きたない豚小屋中をー》


《黙って、もう許して、一言一言が、匕首のように、この耳を。ハムレット、お願いだから、もう、何も言わないで。》

ハムレット
《人殺し、悪党。まえの夫にくらべたら、その靴の紐を解くにも値しない下司野郎。
王は王でも茶番狂言の道化役。
領土と王権を掠めとった巾着切り。貴い王冠をこっそり棚からおのれのところへー》


《もう許して。》P118~120

 母の部屋に出向き、前王を捨てて叔父との生活を選んだ母を激しく糾弾するハムレット。
 表現力に溢れた言葉の一節一節が魅力的な文章でした。
 
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