ソーニャの外堀を埋めていくことく、追い詰めるラスコーリニコフ 「罪と罰」より - 書評あれこれ~

あらすじ ソーニャの外堀を埋めていくことく、追い詰めるラスコーリニコフ 「罪と罰」より 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説
ドストエフスキー

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)


罪と罰

ドストエフスキー著 工藤精一郎訳「罪と罰」新潮文庫

《「お金を貯えることはできませんか?万一の場合に備えて?」ととつぜん彼女のまえに立ちどまって、彼は尋ねた。
 「だめですわ」とソーニャは蚊の鳴くような声で言った。
 「むろん、だめでしょうね!でも、やってみたことはありますか?」と彼はほとんどあざけるようにつけ加えた。
 「やってみましたわ」
 「そして挫折したというわけか!まあ、それがあたりまえでしょうな!聞くまでもないですよ!」
 そしてまた彼は部屋の中を歩きまわりはじめた。また一分ほどすぎた。」
 「毎日収入があるわけじゃないんでしょ?」
 「ええ」と彼女は身を切られるような思いで、やっと囁くように言った。
  ポーレチカも、きっと、同じような運命になるでしょう」と彼はだしぬけに言った。
「ちがいます!ちがいます!そんなことあってたまるもんですか、ちがいますとも!」とソーニャは、まるでナイフでぐさりとぐられたように、悲鳴に近い声で、必死に叫 んだ。
「神さまが、神さまが、そんおそろしいことを許しません!・・・・・・」
 「ほかの人には許してますよ」
 「いいえ、ちがいます!あの娘は神さまが守ってくださいます、神さまが!・・・・・・」
 と彼女はわれを忘れて、くりかえした。
 「だが、神なんてぜんぜん存在しないかもしれないよ」かえってひとの不幸を喜ぶような意地悪さで、ラスコーリニコフはこう答えると、にやりと笑って、彼女を見た。
 ソーニャの顔はさっと変り、ひくひくと痙攣がはしった。彼女は言葉につくせぬ叱責をこめてじっと彼を見つめた、そして何か言おうとしたが、言葉にならず、不意に両 手で顔をおおって、なんとも言えぬ悲痛な声でわっと泣き伏した。》P96

 毎日飲んだくれる父、マルメラードフに代わって娼婦として家計を支える、ソーニャ。
 ラスコーリニコフは妹、ポーレンカもソーニャと同じような運命を辿るのではないかと迫る。
 ソーニャはそれを否定するが、ラスコーリニコフは畳み込むように彼女を詰問し続ける。
 まるで、外堀を埋めていくかのようにソーニャを追い詰めていくラスコーリニコフの姿はあまりにも卑しいとともに、その緊迫感に引き寄せられました。
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