第三章 ラピュタ(天井の国)渡航記 ガリヴァー旅行記 - 書評あれこれ~

あらすじ 第三章 ラピュタ(天井の国)渡航記 ガリヴァー旅行記 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 スウィフト著 中野好夫著「ガリヴァー旅行記」新潮文庫

第三章 ラピュタ(天上国)渡航記

 船医として東インドへ航海する船に乗り込んだガリヴァーは海賊船に船を襲われ、小さな独木舟に乗せられ海に流されてしまう。無人島に流されたガリヴァーはついに食料も底を付き、不安と疲労の中で絶望に苛まれる、ガリヴァーのいる無人島の上に空に浮かぶ島、ラピュタが出現する。「ラピュタの住人から海岸へ出よ」と合図を受けたガリヴァーは、島から座席のついた鎖に引き上げられてラピュタ人に助けられる。
 文中で「終始なにか深い思索に熱中していて、なにか外からそれぞれの器官に刺激を与えてでもやらなければ、物も言えなければ、他人の話に耳を傾けることもできないらしい」と言っているように、高遠な思索ばかりにふける侮蔑的な態度に愛想を尽かしてしまい英国に帰国する。

《帰ると彼らは地上のあらゆる遣り方を蛇蝎しはじめ、芸術も学問も言語も機械も、いっさい新しい基礎によってやり直そうという計画をたてた。そのためにまず彼らは王から、ラガードーに企画士養成の学士院を開設する許可を得た。この革新気分はたちまち国民の心をつかんでしまって、今では国内、町といえるような町で、この種の学士院を持たないものは一つもない。これらの学士院では、教授たちは農業や建築の新様式だとか、あらゆる商工業に用いる新式用具の考案に没頭している。しかも彼らに言わせると、これらを採用すれば、従来十人の仕事がたった一人でできるのであり、宮殿はたった一週間で、しかも一度建てたら永久に修繕さえ要らない材料でできるし、地上のいっさいの果実はいつなりと好きな季節に熟させることができる。そしてその収穫高も現在の百倍にはなるという、その他知れない結構なことばかりなのである。ただ一つ困ったことは、これらの計画がまだ今のところどれ一つとして完成していないということだ、だからそれまでは国内いたるところ惨憺たる荒廃状態で、家は破れる、人民は衣食に事を欠く、しかもそれだからといって彼らは意気阻喪するどころか、希望半分、絶望半分に、さらに五十倍の猛烈さをもって計画遂行に没頭するのである。》P227

 まるで現代の政治家の皮肉をそのまま書いているのではないかと錯覚してしまった文章でした。マニフェストで現実離した公約を高々と掲げながら、結局は実現できずに終わる。しかし、また次の選挙では懲りずに高々と現実離れした公約を掲げる現在の姿をそのまま表しているように思えてなりませんでした。

《これは彼らが応用幾何学というものを頭から軽蔑するところから来たもので、彼らは応用幾何学などといえば、そんなものは賤しい職人の業だと軽蔑する。しかも彼らの与える指図というのは、職人たちの知力にはあまりにも高遠であるため、絶えず間違いばかりしているのだ。なるほど定規や鉛筆や分度器を使ってする紙の上の仕事では、彼らはたいへん巧妙だ。だがかんじんの日常の行動においては、この国の人間くらいぶざまで、下手で、不器用な人間を見たことがない。またただ数学と音楽だけを除けば、その他のあらゆる問題に関して、およろこれくらい理解の鈍い、でたらめな人間もみたことがない。理屈を言わせればさっぱり筋が通らないし、それに時たま彼らの意見が正しい時(ただしそんな時は滅多にない)は別だが、でなければ事ごとに猛烈に反対する。想像とか、空想とか、創意といったものには全然縁なき衆生だ、第一そういった観念を表す言葉から持っていない。彼らの頭も心も、もうまったく先に言った二つの学問の中に限られてしまっているのである。》P210

 著者は決して科学を否定してるわけではないが、実際の役に立たない学問は無力だという見解に立っています。
 図面の上では正確に引けてもそれで実際に家が建たなければ意味がありません。
 実用のための学問ではなく、人類に貢献しない学問のための学問になってしまっていることへの批判が込められています。

《吾輩としては、この傾向はむしろしばしば見られる人間共通の弱点、すなわち自分自身に少しも関係のない事柄、そしておのれの学問、天性からいって、全然不適任な事柄であればあるほど、かえって妙に好奇心を起して思い上がったことを考えたりする。この弱点に原因するものだと考えている。》P211

 政治等の自分自身とは縁遠い高遠な事柄ほど人はかえって好奇心を起すことがある。思索の中だけで大言壮語を唱えて悦に浸ることへの批判が含まれていると思いました。

 当時のイギリス(1700年代)の風刺を行った作品ですが、決してその時代だけに限った事ではなく現代にも通じる部分が多く、この作品の普遍性を感じました。

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