罪と罰 下 - 書評あれこれ~

あらすじ 罪と罰 下 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 ドストエフスキー「罪と罰 下 工藤精一朗訳」新潮文庫

あらすじ

 「一つの微細な罪悪は百の善行に償われる」という理論のもとに、高利貸しの老婆を殺害しその資産を奪おうとしたラスコーリニコフはその場に居合わせた老婆の妹までも殺害してしまう。そして、関係ない人間をも殺害してしまった事への罪の意識に苛まれ、最終的には自首を決意する。
 下巻では娼婦として家族のために働くソーニャの自己犠牲に徹した生き方に心を打たれ、自首を決意する。

《これは病的な頭脳が生み出した事件です。現代の事件です。人心がにごり、血が《清めるなどという言葉が引用され、生活の信条は安逸にあるとい説かれているような現代の生みだしたできごとです。この事件には書物の上の空想があります、理論に刺激された苛立つ心があります。そこには第一歩を踏み出そうとする決意が見えます、しかしそれは一風変った決意です、-山から転落するか、鐘楼からとび下りるようなつもりで決意したが、犯罪に赴くときは足が地についていなかったようです。入ったあとドアをしめるのを忘れたが、とにかく殺した、二人も殺した、理論に従って、殺したが、金をとる勇気がなかった、しかもやっと盗んだものは、石の下に埋めた。ドアのかげにかくれれて、外からドアを叩かれたり、呼鈴を鳴らされたりしたとき、苦痛に堪えたが、それだけでは足りなかった、-そして、もう空き家になった部屋へ、なかば熱に浮かされながら、呼鈴の音を思い出しにやって来る。そして背鈴の冷たさをもう一度経験したい気持になったわけだ……まあ、それは病気のせいだとしよう、だがそれだけではない。殺人を犯していながら、自分を潔白な人間だと考えて、人々を軽蔑し、蒼白い天使面をして歩きまわっている、-いやいや、とれもミコライなんかのできることじゃありませんよ、ロジオン・ロマーヌイチ、これはミコライじゃない!》P385

 ミコライの自白によって事件は一旦終結したかに思えたが、ポルフィーリィは鋭い洞察からミコライに出来る反抗ではないことを主張する。
 ポルフィーリィが主張する犯人の心理面の洞察は非常に的確なものであり、ラスコーリニコフは追い詰められていく。

《ぜったいにそんなことにはなりっこない、人間は変るものじゃないし、誰も人間を作り変えることはできない、そんなことに労力を費やすのはむだなことだ、とね。そう、それはそうだよ!これが彼らの法則なんだ……法則なんだよ、ソーニャ!そうなんだよ!……それでぼくはわかったんだ、頭脳と精神の強固な者が、彼らの上に立つ支配者となる!多くのことを実行する勇気のある者が、彼らの間では正しい人間なのだ。より多くのものを蔑視することのできる者が、彼らの立法者であり、誰よりも実行力のある者がが、誰よりも正しいのだ!これまでもそうだったし、これからもそうなのだ!それが見えないのは盲者だけだ!》P303

 良心の呵責に耐え切れぬラスコーリニコフはソーニャに対して自らの思想を打ち明ける。
 不安と恐怖に駆られながらも、自らの主張をなんとか必死になって正当化しようとしているのが伝わる。

《「あれはぼくが……」とラスコーリニコフが言いかけた。
 「水をお飲みなさい」
 ラスコーリニコフは片手で水を押しのけて、しずかに、間をおいて、しかし聞き取れる声で言った。
 「あれはぼくがあのとき官吏未亡人の老婆と妹のリザヴェータを斧で殺して、盗んだのです。」
 イリヤ・ペトローヴィチはあッと口を開けた。四方から人々がかけ集まってきた。
 ラスコーリニコフは自供をくりかえした。》P548

 ラスコーリニコフはついに自らの犯した罪を自供する。法廷の場では自らを一切弁護しようとせず、何故殺人を犯し、強盗を行ったかという質問に対して一切の抵抗もせずに明瞭に答える。最後は恐怖と不安から憔悴しきったように、しずかに自らの罪を打ち明けている。

 不安と恐怖に駆られながら、鬼気迫る勢いで自らの罪を正当化し、追い詰められた状態では反論を続けるも最後には憔悴し切ったように自供をして終っている。
 罪を償うよう説得するソーニャと、そうしなければならないと思いつつも、それに鬼気迫る勢いで反論するラスコーリニコフとのやり取りが印象的でした。

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