桜の森の満開の下 - 書評あれこれ~

あらすじ 桜の森の満開の下 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 坂口安吾著「桜の森の満開の下」(坂口安吾全集6)ちくま文庫

思わずホラーかと思ってしまうような台詞を日常生活の会話の如く、描かれている点が印象的でした。

《「ほれ、ホッペタを食べてやりなさい。ああおいしい。姫君の喉もたべてやりましょう。ハイ、目の玉もかじりましょう。すすってやりましょうね。ハイ、ペロペロ。アラ、おいしいね。もう、たまらないのよ、ねえ、ほら、ウンとかじりついてやれ」》P226

 言い回しはごく自然なのだが、言っている内容はホラーのような内容でした。こんな台詞をごくごく自然な日常風景と思わせてしまうところが凄いと思いました。

《彼は毎晩人を殺していることを昼は殆ど忘れていました。なぜなら彼は人を殺すことにも退屈しているからでした。何も興味はありません。刀で叩くと首がポロリと落ちているだけでした。首はやわらかいものでした。骨の手応えはまったく感じることがないもので、大根を斬るのと同じようなものでした。その首の重さの方が彼には余程意外でした。》P230

 「人を殺している事を忘れている」ととても考えられない台詞をいとも簡単に言っている。首を切るのを大根を切るのと同じようなものと、サラリと言ってしまう表現がまるで狂気性を全く感じさせない文章で、自然に言っているのだけどどこか違和感のある文章でした。

《彼らの家にはすでに何十の邸宅の首が集められていました。部屋の四方の衝立に仕切られて首は並べられ、ある首はつるされ、男には首の数が多すぎてどれがどれやら分らなくとも、女は一々覚えており、すでに毛がぬけ、肉がくさり、白骨になっても、どこのたれということを覚えていました。男やビッコの女が首の場所を変えると怒り、ここはどこの家族、ここは誰の家族とやかましく言いました。》P225

 安吾の作品はとんでもない人物が多数出てきますが、この作品に出てくる人物達は特に突出していました。

 日常ではありえないような台詞や情景を、さも日常風景のように表現する手法が印象的な作品でした。
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