古典力 - 書評あれこれ~

あらすじ 古典力 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説

古典力 (岩波新書)


齋藤孝「古典力」岩波新書を読みました。
 「古典・名著がいいのはわかっているがどう読んだらいいかわからない」人を対象に、古典を効率的に自分の物にするためのノウハウが書かれています。 

《「およそ偉大なものはすべて、われわれがそれに気付きさえすれば、必ず人間形成に役立つものだ」とゲーテは言う。 人間形成の基本は、偉大なもの、すなわち、古典に出会い、刺激を受けることにある。》P72

 「知識よりも人間性」「人間力が大事」という言葉はよく使われるが、「どうしたら人間力を高められるのか?」という問いの答を明確に示した言葉。この本を読んで、「人間形成」というのは、様々な世界観を事前に自分の中に取り込むことで、現実に対してタフになることなのだと思いました。

《まずは肩の力を抜いて、パラパラとページをめくる。そして、偶然出会った文章に心をとめ、そこから何らかの刺激を受け取る。パラパラ読みをすることで、リラックスして感性が目覚め、刺激を受けやすくなる。名著にひれ伏すのではなく、自分にとって刺激があるかどうかで断片を楽しむ。「神は細部に宿る」という言葉があるが、古典の断片にはエッセンスが宿っている。生物の細胞の一つ一つにDNAがあるように、断片にも、その古典の精神のDNAを感じることができる。「全体の流れを理解したうえでないと細部の意味はわからない」という考え方は誤っているわけではないが、これから古典に親しみたいという者を萎縮させかねない。「断片でも自分に突き刺さる文と出会えたならば、それだけでも意味がある」と考える方が積極的になれる。》P22

 特に文学作品は「全体を理解してからでないと、細部は理解できない」と思っていたので、読み始めるのに非常に勇気が必要な事が多かったでした。この文章を読んだ事で「これくらいの肩の力の抜けた感じで読んでも構わないのか!」と思えるようになりました。なかなか読む冊数と書評を書く数を増やす事が出来ない事への解決方法をこの文章は掲示してくれました。

《「加害行為はまとめて一度になされなければならない。けれども恩恵のほうは少しずつ施すことによって、なるべくゆっくりと味わうようにしなければならない」という助言などは、支配術のようでエグい感じがするかもしれないが、「子供を叱るときは一度にやり、ぐちゃぐちゃ引きのばさない」と読めば使える。》P180

 著者の文章での説明の分りやすさがよく分かる文章。固い文体ではなく、非常に柔らかい文体で書かれているのでスラスラと読めてしまう。

 今まで古典的作品(特に文学作品)を読む時に感じていた「疑問」の答えがこの本の中に出尽くしていました。著者は大学生や中学生、小学生に教えた経験もあるので、回りくどい表現は一切せずに、まるで小、中学生に読ませても内容が伝わるのではないかと思うほど分りやすい内容だった。そのような分りやすい内容であるにも関わらず、古典をいかにして「現実に生かすか」、「現実に生かすためにどのように読めばいいか」という問いに対する回答が豊富に記されていた。
 本文の中に《人間形成の基本は、偉大なもの、すなわち、古典に出会い、刺激を受けることにある。》という文章があったが、人間形成のための「古典」の効率的な読み方を指導してくれる最高のテキストだと思いました。
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コメント
非公開コメント

こんばんは。

気付き
気付きさえすれば
広い意味で
環境も
世界も
深化し広がって行きます・・。
>様々な世界観を事前に自分の中に取り込むことで
これも大切なことですよね
これあってこそ
バランスのとれた思想が生まれ
洞察に優れ
先見性を培ってゆくものでしょうか。
大変に有意な書籍のご紹介ありかとうございます。

2012-12-20 21:28 from saki

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