石原慎太郎「新・堕落論 我欲と天罰」新潮新書 - 書評あれこれ~

あらすじ 石原慎太郎「新・堕落論 我欲と天罰」新潮新書 読書感想文

このエントリーをはてなブックマークに追加

解説あらすじ・読書感想文・解説

新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)

$a8lineseparator$
「平和」に慣れすぎてしまったことで、「物欲」や「金銭欲」が暴走して、人間としてまっとうな物の考え方を失っているのであると主張しています。著者がこのような主張をする背景にあるのは戦争体験が大きく関係しています。自らも知らず知らずのうちに「平和の毒」にさらされてしまっているのだと強く感じました。  

《「今はただ我慢をしよう。今はそれしか術はないのだ。戦に破れたということは、そういうことなのだ」と。そういわれて私も納得しました。これは私にとって、自分の国が戦に破れたということを痛切に覚らしめる、個人的だが極めて印象的な出来事でした。》P16

 米兵が暴虐無人な振る舞いをすることに反発した著者を、教師がなだめた時の文章。著者の主張である「平和」とは何の代償もなく当たり前にあるものではなく、軍備等の代償があって得る事が出来るという考えはこの経験から端を発したのではないかと思います。

《そして今日の日本を危ういものにしてしたてたある種の観念とは、「平和愛仰」です。誰しも平和、安寧を望まぬ者はいまいが、平和というものはただ願っただけで得られるものでは決してない。そのための代償が必ず要るのだ。それは侵略に備える軍備であり、ある場合には戦争ともなる。》P102

 アメリカという他社のいいなりになっている現実を直視しないで、「平和願望」という理念だけが先行している現実に著者は警笛を鳴らしている。平和というのは本来、侵略に備える軍備等の代償があって成り立っているのに、現在の「平和」であるという状況に慣れきってしまっている状況を「平和の毒」と称して批判している。

《人間が人間である限り世代や身分立場を超えて、いわば垂直に継承されるべき価値の基軸があるはずですが、今回の出来事はそれを疑わせる、というよりも歴然と否定した人間の所作に他ならない。ならばこうした出来事が如実に証している、垂直なる価値の基軸に代わるものとは結局、長きにわたって続いてきたあてが扶持の平和の内に培われた平和の毒、物欲、金銭欲でしかない。》P40

 平和に慣れきってしまうことで、本来継承されるべき「卑怯を憎む心」や「他人を尊ぶ心」が廃れて変わりに「物欲」や「金銭欲」が人間を支配するようになったと語っている。「物欲」や「金銭欲」の暴走した結果が死亡した親を弔いもせずに食い物にして暮らす家族、新しい愛人のために子供を虐待して殺す稚拙な母親の等の人間の惨状であると述べている。

 近年著者は《「軍事的な抑止力を強く持たない限り外交の発言力はない。今の世界で核を保有しない国の発言力、外交力は圧倒的に弱い。》という旨の発言をしていましたが、その背景にあるのは「平和」な状態に慣れきった状態では他国と対等に渡り合うことが出来ないということなのだと思います。
 一見、あまりに突飛な発言だと思ってしまったのは、自分自身も「平和」な状況に慣れすぎてしまったからなのかもしれません。
関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加


書評あれこれ~

書評記事おすすめ
世界文学名著おすすめ日本文学名著おすすめ

コメント
非公開コメント

石原慎太郎「新・堕落論 我欲と天罰」新潮新書
一橋総合研究所「身の丈起業」のすすめ 講談社現代新書

二つとも面白そうな本ですね、本屋にいって買ってみようと思います。

私が最近読んだ本で、面白かったのは、
鈴木邦男「愛国と憂国と売国」集英社新書
樋口陽一の「「日本国憲法」まっとうに論議するために」みすず書房
與那覇潤「中国化する日本」文藝春秋
などです、機会があれば私のブログで紹介してみたいと思います。

2012-12-05 19:57 from 竹林乃方丈庵

Re: コメントありがとうござます。

> 石原慎太郎「新・堕落論 我欲と天罰」新潮新書
> 一橋総合研究所「身の丈起業」のすすめ 講談社現代新書
>
> 二つとも面白そうな本ですね、本屋にいって買ってみようと思います。
>
> 私が最近読んだ本で、面白かったのは、
> 鈴木邦男「愛国と憂国と売国」集英社新書
> 樋口陽一の「「日本国憲法」まっとうに論議するために」みすず書房
> 與那覇潤「中国化する日本」文藝春秋
> などです、機会があれば私のブログで紹介してみたいと思います。

 
 コメントありがとうございます。
「中国化する日本」というタイトルに興味を覚えました。
内容を知りたいのでブログに書いていただけるとうれしいです。

2012-12-05 23:07 from タケゾウ

トラックバック
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます 
Copyright © 書評あれこれ~ All Rights Reserved.