会社は2年で辞めていい - 書評あれこれ~

あらすじ 会社は2年で辞めていい 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 山崎元「会社は2年で辞めていい」幻冬舎新書

 12回の転職を持つ著者が書いた転職と会社と個人の関係に対する基本的考え方とその方法論について書いた著書。どのようにして自らの「人材価値」を作り、「転職」という選択肢を活用しながら、ビジネスと云う世界の中を乗り切っていくかのノウハウが書かれている。

《通常一つの会社が、死ぬまで社員を抱えてくれるわけではないし、仮に経済的に何とかなっても、それだけで本人が満足できるものではない。また、一人一人の抱える事情や好みと、会社の要求が常に一致するとは限らない。》

 著者の会社との距離感が凝縮された文章。会社は社員を責任もって守ってくれる存在ではないし、社員の欲求を満たすために存在しているわけでもない。あくまでも、個人が仕事という形で会社に対して「商品」を提供する代りにその対価として給与を払う関係であるという利害のみの関係であり、家族や友人のような情でつながった関係ではないという考えが根底にある。

《就職に失敗があるのは当たり前だ。合わない会社だとわかったら、貴重な時間を無駄にせず、次の機会を試した方がいい。》
《より正確にとらえるなら、転職とは単なる「取引先の変更」だ。自分の労働力を買ってくれる取引先を、こちらの側から変更するのが、転職だ。それ以上でも、以下でもない。》

 《就職に失敗があるのは当たり前だ》というのはやはり、「会社は個人の欲求を満たすために存在しているのではない」という考え方が根底にある。そして、個人が現在の状況では自らの状況を改善するためのオプションとして「転職」という選択肢があると主張している。

《ところで、実際に転職したい理由が、人間関係だったり、単に飽きたということであったり、必ずしも美しい理由ばかりでないことは、採用側も大まかには知っている。 そう考えると、「辞めたい理由」の質問は、何割かは、転職という一種の「商談の」相手に対して、事実と気づかいのバランスを取りつつ、破綻のない理由のプレゼンテーションの能力を問うビジネス能力テストなのだ。嘘にならないように本音も上手に混ぜながら、マナーを踏まえて、失点を小さく抑えたい。》

 転職活動の面接でほぼ聞かれると思われる「何故前職を退職したか」という質問、能力や実績よりも会社に対する忠誠心や、採用する側の「長く勤めてもらいたい」という項目を重視する質問のように思われる。しかし、著者の見解では「プレゼンテーションの能力を問う質問」であると主張しており、あくまでも面接は「自分と云う商品を売るビジネスミーティングである」と考える著者の一貫した考え方が伺える。
 
 終身雇用が崩壊したとはいえ、「会社に自分の人生を託す」という傾向がまだ根強い中でこうした著者の考え方は現在の状況に合った考え方だと思われる。
 しかし、この本に掲示されている考え方、方法はどの会社からも引く手あまたの著者だからこそ実行可能な部分も多くあり、必ずしも全てが一般の人々に活用出来るわけではないように思う。例えば、本文で《会社は、一年で辞めてもいいし、何回辞めてもいい。》とあるが、なかなか一年で辞めたとなると後の転職活動時に不利になるのでなかなか難しいものがある。
 「会社と個人の関係はあくまでも利害関係でそれ以上でもそれ以下でもない」という基本的な考え方は当てはまるとしても、それ以外の具体的方法論は各個人の状況と照らし合わせる必要があると思いました。

会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書)


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コメント
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会社と個人の関係は利害関係。
ひとつのところが長いと、
その実態が見えにくくなってきます。
自分の居る場所を俯瞰することは大事ですね。

2012-12-01 20:02 from 涼虫(すずむし)

Re: 自分の居る場所を俯瞰する事

> 会社と個人の関係は利害関係。
> ひとつのところが長いと、
> その実態が見えにくくなってきます。
> 自分の居る場所を俯瞰することは大事ですね。

 「自分の居る場所を俯瞰することは大事」というのは正にその通りだと思います。
 一つの所にずっといることで、今居る組織の論理が「絶対」なものになってしまうことも少なからずあると思います。
 組織がずっと安泰ならばそれでも良かったかもしれませんが、現在のような時代になるとそのような考えが成り立たなくなってきていると思います。

2012-12-01 23:31 from タケゾウ

こんばんは。
非常に興味深く読ませていただきました。

>会社は社員を責任もって守ってくれる存在ではないし、社員の欲求を満たすために存在しているわけでもない。

そうなんですよね。
あくまで契約といいますか
「仕事」というか「(人生の)時間」を文字通り対価にして
大多数の人間は働いている訳ですが。

採用する部署にも居たことがある
のですが
お書きになられているように

>なかなか一年で辞めたとなると後の転職活動時に不利になるのでなかなか難しいものがある。

いくら終身雇用制崩壊しつつあるとはいえ、まだ、現在の日本では
1~2年で辞めることを繰り返す人間を採用したいとは思わないと思います。

まぁ、自分も含め、人間の“強度”みたいなものも以前に比べて落ちている気がするので

今まで以上に気を使って部下を育てている上司や先輩が多いと思うのですが(笑)

2012-12-03 00:56 from きみやす

Re: コメントありがとうございます。

>きみやすさん

≪まぁ、自分も含め、人間の“強度”みたいなものも以前に比べて落ちている気がするので 今まで以上に気を使って部下を育てている上司や先輩が多いと思うのですが(笑)≫

 コメント頂きありがとうございます。
 「人間の強度」が落ちたというよりも、「頑張っても先の見通しが無いので踏ん張りが効かない」という方が個人的にはしっくりくるような気がします。
 終身雇用の中ではある種の「師弟関係」のようなもので、「師に従事したら弟子は一生師についていく」また、「師は弟子を取った以上、どんな無能な弟子でもきちんと一人前に教育する」というのが一般的だったと思います。故に理不尽なことや、辛いことがあっても「師は自分を最後まで責任もって指導してくれる」という暗黙の了解があったから長続きしたんだと思います。
 しかし現在は「上司は自分に対して責任を持ってくれるとは限らない」なら「頑張ろうと踏ん張るが、先行きどうなるか分からないと思うと、踏ん張る力が抜けてしまう」というのが現在の感覚ではないでしょうか。
 あくまで昔は環境が「辞められない」という雰囲気を作っていただけであって、昔の経済成長期の人々が現代のような環境で同じように振舞えるかといったら、はなはだ疑問であると思います。

2012-12-03 12:56 from タケゾウ

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