リチャード3世 - 書評あれこれ~

あらすじ リチャード3世 読書感想文

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解説あらすじ・読書感想文・解説 シェイクスピア 福田恆存訳「リチャード3世」新潮文庫

あらすじ
 リチャードは兄のエドワード四世が病に倒れたことをきっかけに、王の座を自らの物にするため数々の策略を講じて、数々の人々を手に掛けて行く。自らの野心のために残忍で狡猾な策略を練っていくリチャードとその周囲の人々との怨恨関係や彼の狡猾さ、ずる賢さを的確に表現した言葉がとても印象的な作品でした。

《さあ、二度と戻らぬ旅路を辿るがよい、お人好しの凡くら、クラレンス、俺はお前が大好きだ、だから、すぐにも天国へ送りとどけてやる、天の方で受取ってくれさえすればな。》

 クラレンスを持ち上げるような発言を繰り返しながら、いざ離れると踵を返したようにその態度を変えた発言をしている。表面上では下手に出たような発言を繰り返しているが、腹の中では野心をたぎらせて虎視眈々とチャンスを伺っている。クラレンスと別れた後に、その野心をたぎらせて事を起こす準備をしているリチャードの腹の中の本音が垣間見られる。

《来るものかーそうだ、人殺しは俺だ、こわければ逃げろ。ふむ、自分から逃げるのか?なぜそうしなければー俺の復讐がこわいから。俺が俺に復讐する?そうはゆかぬ、俺は自分がかわいい。何かいいことでもしてくれたからか?おお、それどころか!俺は、自分で自分を憎んでいるくらいだ、憎むべき罪の数々を犯した俺自身を!悪党だ、俺は。しかも、そしらぬ顔をしている。(中略)そして、どのどれもが、俺を悪党呼ばわりだ。偽証の罪を犯したときめつけてくる。人殺し、それも極悪非道、このうえなしの冷酷な人殺しだと。大なり小なり、きょうまで犯した数々の罪が、一緒になって法廷になだれこみ、「有罪だ!有罪だ!」と喚き散らしている。絶望だ。身方は一人もいない。》

 自らが殺害した、あるいは殺害を指揮した人々の亡霊が悪夢となって現われたことで、眠りから跳ね起きた直後のリチャードの文章。犯した数々の罪の意識に苛まれているとともに、冷血に数々の罪を重ねた事に対する自己嫌悪、そして周囲が自らを悪人や人殺しと揶揄して悪党呼ばわりしているという、被害妄想に陥っている。悪夢に苛まれた中で今までの冷血さや冷静さが打って変わって、亡霊に対して叫び続ける姿が彼の豹変ぶりを的確に表現している。

《馬をくれ!馬を!代りにこの国をやるぞ、馬をくれ!》P181

 身方の劣勢の状況を報告され、援軍を必要としなければ敗北するという状況を聞かされたときのリチャードの一文。逃亡するために馬をくれるなら、国さえも与えていいという状況にリチャードは追い込まれている。リチャードのうろたえぶりが非常によく表現された一文。

 自らの野心のために数々の策略を講じて、数々の人々を手に掛けていったリチャード。しかし、最後には自らが手にかけた人々の亡霊に苦しめられ、馬を探して戦場から退却するという末路が描かれている。当初は怨恨や恨みと云った感情のぶつかり合いが展開されていたが、最後には自らの策略に溺れる形で堕落していくリチャードの姿が欲望のために自らの手を汚していく人間の恐ろしさ、ずるさを描きつつもどこか滑稽で憎めないようなリチャードの姿が印象的で面白い作品でした。

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